昨日、フェリーに乗っていたときのこと。
昨日はお天気も良く、暖かかったので、フェリーのデッキで景色を眺めていると、7、8歳の女の子と男の子が私の横で飛び交うカモメにパン屑を投げ始めました。
何気なく女の子の顔を見ると、女の子は笑顔でパンの袋を私に差し出します。
普段なら受け取るのですが、このとき、あることが頭をよぎり、受け取るのを躊躇い断りました。
というのも、風貌からこの二人の子はシリアからの難民。
パンを受け取ったら、お金をちょうだい、そう言われるだろうと思い、断ったのです。
でも二人があんまり楽しそうなので、二度目に差し出されたときは、パンを一切れ受け取り、小さくちぎったパンのかけらを、空高く投げました。
巣立って間もない無数のユリカモメが一斉に私たちの頭上に集まり、二人は笑顔で顔をクシャクシャにしながら、大きな声で何かを言い、ほんの1メートルほど先を飛ぶカモメたちに手を伸ばします。
その姿が本当に楽しそうで、パンと引き換えにお金を無心されることを躊躇った自分を、恥ずかしく思いました。
投げるパンが無くなって、トルコ語が分かるという女の子に聞くと、二人はシリアから来たとのこと。
恐らく家族で内戦を逃れて、イスタンブールに来たのでしょう。
無邪気に笑っているこんな小さな子どもたちが、私には想像もつかないほど恐ろしい戦争を体験したのかもしれないと思うと、言葉では言い表せない気持ちでいっぱいになりました。
一緒にフェリーを降り、お腹空いてない?と聞くと、空いていないと言いましたが、フェリー乗り場前にあるケバブ屋さんの前に来たとき、女の子が何か言いたげに立ち止まりました。
お腹空いているんだよね?ケバブ食べる?と聞くと、女の子は、うん、と小さくうなずきました。
三人でケバブ屋さんの列に並び、二人にケバブとアイラン(塩味のヨーグルトドリンク)を買い、じゃあね、あそこのベンチに座って食べるのよと言って行こうとする私に、女の子が何か言おうとしました。
"Abla..."(お姉さん)と言う女の子。
でもその後の女の子の言葉を聞くのが怖くて、私は、じゃあね、またね、と言って二人と別れました。
私が女の子の言葉を最後まで聞けなかったのは、女の子からもし、もっとお金をちょうだい、と言われるのが怖かったのです。
というのも、二人はケバブを買ったときに受け取ったおつりから、目を離さなかったから。
イスタンブールに来て戦争からは逃れられても、親に仕事が無ければ、道行く人に物乞いする以外に生きる術がないのが現状なのです。
終戦後、70年近く戦争をしていない日本にとって、戦争は他人事かもしれません。
けれどそんな中、今でも世界のどこかで多くの人が戦いで死に、食べるものも、住む家もない中で暮らしていることを、知ってほしいと思います。
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